遺伝情報の活用

候補遺伝子多型解析生活習慣・環境要因と相関する候補遺伝子多型解析【研究計画】

生活習慣・環境要因と遺伝素因の交互作用の解明するために、候補遺伝子多型に関して解析を行います。

 


 

ゲノム網羅的解析では、その名の通り、まずゲノム情報を網羅的に調べてデータを得ることが研究のスタートとなります。

特定の仮説から始まっているわけではないので、今までの知識・常識を超えた発見につながる可能性がありますが、データの解析にあたっては、検定の多重性や集団の構造化という問題を解決しなくてはなりません。

特に分子疫学コホート研究におけるゲノム解析の最大の使命である生活習慣・環境要因と遺伝素因の交互作用の解明については、単独の分子疫学コホート研究では一般に検出力不足(データ数の不足により差が明らかにならない)であることが考えられます。

そこでこれらゲノム網羅的アプローチを補完する観点からも、候補遺伝子アプローチを組み合わせて行います。

  • 今までにがん罹患リスクに関する主効果が日本人の症例対照研究で示されている、候補遺伝子多型に関して解析し、生活習慣・環境-遺伝子交互作用の解析を行う。

 

具体的には下記の群の遺伝子等の多型が候補として考えられ、目標とする疾患に応じて選択することになります:

  1.  ホルモンに関連する酵素や受容体
  2. 脂肪・ビタミン・アルコール代謝に関連する酵素や受容体
  3. 炎症や免疫に関与する酵素や受容体
  4. DNA修復酵素
  5. ドーパミンやセロトニンに関連した酵素
  6. 肥満に関連した遺伝子
  7. 凝固因子に関連した遺伝子
  8. 発がん物質や薬剤の代謝酵素
  9. がん関連遺伝子
  10. 糖尿病に関連する遺伝子
  11. その他

 


 

なお血液検体試料総数として6万件が確保され、約20年間の縦断調査が完了しているJPHC-OMICSのゲノム疫学的解析を本研究で行う意義は、将来の分子疫学コホート研究におけるゲノム解析のシミュレーションに留まりません。

まず、この規模の分子疫学コホート研究において明らかに出来ることを現時点において明確にすることで、ゲノム情報に基づく個別化疾病予防の実践を早い時期に実現することが可能になります。

そして、この規模の分子疫学コホート研究や血液の保存方法では明らかに出来ないことを明確にすることにより、今後構築するコホートにおいては、どの程度の規模の確保が必要であるのか、どのような血液検体の保存方法が必要なのかを検証することが可能になります。

さらに、我が国が戦前・戦後の2つの世代の大規模分子疫学コホートを持つことにより、遺伝素因と生活習慣・環境要因の相互作用についてより高度な知見や仮説を生み出すことが期待されます。

JPHC-OMICSなどの収集試料等を用いたゲノム解析は、戦略推進費の援助による新たな分子疫学コホートの解析と統合し、相互参照しつつ進めるべきデータセットを提供することになるでしょう。


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